赤坂編『東北学(Vol. 3)』
……そうだとすれば、それを一瞬にせよ見るためには、フィクションこそが真実であるような世界こそが、特別なフィルターのようにして、必要だったのではなかったのか。
赤坂憲雄編著(2000)『東北学(Vol. 3)――(総特集)狩猟文化の系譜』東北芸術工科大学文化研究センター、364頁。堀浩哉の文章にて。プロレス。
明石『自治体エスノグラフィー』
……そして、誰かが仕事を肩代わりするのは良いが、張り切りすぎて自分たちの仕事に跳ね帰ってくるようなことは、やりすぎだから困るというのが係の中での暗黙の了解事項だった。
明石照久(2002)『自治体エスノグラフィー――地方自治体における組織変容と新たな職員像』信山社出版、120頁。著者色濃いかな。
秋山ほか『アマガエルのひみつ』
夏の日中のアマガエルは、だいたい前足を腹の下に入れて背中を丸め、じっとしている。……
秋山幸也(文)/松橋利光(写真)(2004)『アマガエルのひみつ』山と溪谷社、66頁。適度に愛。
足立『職業としての公務員』
……近代の自由主義的民主政治というものは、民主的とよばれる一連の手続、方法、形式を信頼し、そのような民主的な手続や形式をふむならば、全国民の意志と合致する公共善や公共の福祉がおのずから顕現してくるという信念や擬制のうえに成立している……。
足立忠夫(1978)『職業としての公務員――その生理と病理』公務職員研修協会、136頁。茶目っ気も。
荒木編『在野研究ビギナーズ』
……自分がやってきたことを不自由な物質に託すことで、研究上のケジメがつく……
荒木優太編著(2019)『在野研究ビギナーズ――勝手にはじめる研究生活』明石書店、174-175頁。在野をこえて?
アリストテレス『ニコマコス倫理学』
……まことに、真の意味における善きひと・賢慮のひとは、われわれは思うのであるが、いかなる運命をも見事に堪え忍び、与えられたものをもととして常に最もうるわしきを行うものなのであって、それはあたかも、よき将軍は手許にある軍隊を用兵上最もたくみに使用するし、また靴工は与えられた皮革から最もうるわしい靴をこしらえ、他の工人たちもすべてそうであるのと一般である。……
アリストテレス(1971,73)『ニコマコス倫理学 上』『下』岩波文庫(高田三郎訳)、『上』の45頁。「われ悩めば足」りたいが(『下』の146頁)。
イーグルトン『美のイデオロギー』
……そしてこのことは、もしそれがなければなんの気なしに接近していたかもしれない自己目的主義の教義に慎重に対処しなければならない理由のひとつとなるだろう。
イーグルトン、T(1996)『美のイデオロギー』紀伊國屋書店(鈴木聡・藤巻明・新井潤美・後藤和彦訳)、570頁。委ねられたり。
池上編『現代財政を学ぶ』
……「べき」を含む命題が徹底して削ぎ落とされ、「である」を含む命題だけを科学的に意味があるものとしてとらえ、ポパー的な意味での……
池上岳彦編著(2015)『現代財政を学ぶ』有斐閣、29頁。赤石孝次の文章にて。9章谷が好み。
池田『野生鳥獣と人間生活』
……イノシシの駆除の記録的な例は、対馬で元禄13年(1700年)から宝永6年(1709年)の10年間で完全に捕り尽くした著名な事実がある。……
池田真次郎(1971)『野生鳥獣と人間生活――自然保護の理論と実際』インパルス、262頁。事例は豊富。
石沢『貝に続く場所にて』
……私がその言葉に感情を添える時、その言葉を身に刻んで暮らし、そしてあの水の壁を目の当たりにした人にとっては、感傷で距離を測り間違えていると映るのではないだろうか。……
石沢麻依(2021)『貝に続く場所にて』講談社、41頁。旅する本屋さんから。
石牟礼『苦界浄土』
そのような様子の子どもたちをみるのは、自分たちの死後、この子がどうなるか、と考えざるをえない親たちにとってはいかにもいじらしく、お互いに今はまだ生きていて抱きあっているという束の間の交感は束の間の慰藉であるのにちがいなく、専用バスの中は、そのような肉親の情愛がひしひしと切なく、「しのぶちゃん」のご自慢の花帽子が、窓から入る風にふわりと浮きあがり……
石牟礼道子(1969)『苦海浄土――わが水俣病』講談社、18頁。込められた。
伊勢田『動物からの倫理学入門』
また、幸福が大事だということは(略)誰も否定しないにせよ、幸福だけが大事だと言われると、とたんにそれと矛盾するさまざまな直観がうずきだすことになる。……
伊勢田哲治(2008)『動物からの倫理学入門』名古屋大学出版会、314頁。題名通り○
井筒『イスラーム生誕』
「アブド」(‛abd)という言葉を日本語に移すとき、「奴隷」という語のもつあまりに強烈な生々しい印象を緩和したいという気持に押されて、われわれは普通「僕」という語を使う。しかし……
井筒俊彦(1990)『イスラーム生誕』中公文庫、137頁。多神に堕つ、か。
井戸『無戸籍の日本人』
その一方で「離婚」や「未婚」、または婚外での「性交渉」「妊娠」「出産」は、女性として「あるべき形」からの逸脱であり、社会を乱すものだから、絶対に認められないという古色蒼然たる意識。
井戸まさえ(2016)『無戸籍の日本人』集英社、365頁。772。
伊藤ほか『動物生態学』
……状況証拠はたくさんあるのだから、それが種間競争の作用であるか否かを判別するには、どのような理論的枠組みのもとで、どのような方法を取れば良いかを考えるのが科学としての筋道である。
伊藤嘉昭・山村則男・嶋田正和(1992)『動物生態学』蒼樹書房、292頁。好まし。
井原『家庭菜園ビックリ教室』
肥料のある所、肥料の塊りの所へ根が伸びてきて肥料を根の先端でナメるのがよいのだ。
井原豊(1994)『図解 家庭菜園ビックリ教室』農山漁村文化協会、35頁。岩木山麓にて。
今関『きのこ』
……マスタケに似るがナラやクリなどに生え、鮮黄色で赤味が少ないのがマスタケの基本種で アイカワタケ L. sulphureus (Fr.) Bond. et Sing. という。味はマスタケの方が良いようだ。
今関六也編・解説、水野仲彦ほか写真(1977)『野外ハンドブック・3 きのこ』山と渓谷社、164頁。いっとき秋田。
岩田『日本経済を学ぶ』
……こうしたデフレを予想する企業の生き残りをかけた努力が、経済全体の需要を減らし、GDPギャップを拡大させて、マクロ経済の悪化と長期経済停滞を招いたと考えられます。
岩田規久男(2005)『日本経済を学ぶ』ちくま新書、227頁。とばせた。
岩田『ヨーロッパ思想入門』
……応答は他者の自由の深淵から湧き上ってくるもので、私たちが外側から強制できることではない。……
岩田靖夫(2003)『ヨーロッパ思想入門』岩波ジュニア新書、128頁。潮流ふたつ。
岩淵編『悪文』
……知性よりも感性におぼれた書きぶり……
岩淵悦太郎編著(1984)『悪文(第3版)』日本評論社、187頁。水谷静夫「言葉を選ぶ」の文章にて。痛快。
上橋『隣のアボリジニ』
……大きな川に胸までつかりながら、川に溶け込むことも、岸に上ることもできずに、立ち往生をしているような不安定さが、そこにはあるからです。
上橋菜穂子(2010)『隣のアボリジニ――小さな町に暮らす先住民』ちくま文庫、214頁。たたみかける終章。
ヴェーバー『職業としての政治』
……官吏にとっては、自分の上級官庁が、(略)自分には間違っていると思われる命令に固執する場合、それを、命令者の責任において誠実かつ正確に(略)執行できることが名誉である。……
ヴェーバー、M(1980)『職業としての政治』岩波文庫(脇圭平訳)、41頁。「それにもかかわらず!」(106頁)。
海上『環境思想』
……ディープ・エコロジーの環境問題への対応は、病気の治療方法を示すのではなく、健全な肉体であれば病気にはならないが、健全な肉体とはいかなるものかを説明し、問題への対処は病気を生む肉体という土壌を改善すればいいと述べているようなものなのである。
海上知明(2005)『環境思想――歴史と体系』NTT出版、203頁。見渡す。
梅棹『知的生産の技術』
知的生産の技術のひとつの要点は、できるだけ障害物をとりのぞいてなめらかな水路をつくることによって、日常の知的活動にともなう情緒的乱流をとりのぞくことだといっていいだろう。……
梅棹忠夫(1969)『知的生産の技術』岩波新書、96頁。言い得て。
エマーソンほか『方法としてのフィールドノート』
……しかしながら、実際には、観察した出来事についての「自然な」あるいは「正確な」書き方などというものは存在しない。……
エマーソン、R・M/フレッツ、R・I/ショウ、L・L(1998)『方法としてのフィールドノート――現地取材から物語作成まで』新曜社(佐藤郁哉・好井裕明・山田富秋訳)、30頁。有用。
大村ほか『『学説史』から始める経済学』
……一労働日における必要労働は4時間から2時間へと短縮されます。一労働日が8時間で変わらないのであれば、この短縮によって生み出された2時間分を、資本は新たに剰余労働時間に付け加えることができます。……
大村泉・宮川彰・大和田寛編著(2009)『『学説史』から始める経済学――剰余価値とは何か』八朔社、195頁。久保誠二郎の文章にて。そもそもか。
大森『自治体行政学入門』
……型にはまった行動は、単に仕事の処理の円滑化を保障するだけでなく、自他共に予測可能な世界を、したがって心理的には安心の世界を形成する。……
大森彌(1987)『自治体行政学入門』良書普及会、190頁。少々過激な自治体激励論(48頁)。
小笠原ほか『秋田の野鳥百科』
……ツツドリ、カッコウ、ホトトギス、ジュウイチの4種だが、4種とも自分では巣造りはせず、他の野鳥の巣に卵を産み、自分でヒナを育てることもしない。
小笠原暠(文・写真)/泉祐一・佐藤磯男(写真)(1984)『秋田の野鳥百科』秋田魁新報社、69頁。魅せる写真。
小笠原ほか『秋田のけものたち』
……私達はオニギリを持ったまま、モモンガの着地した所に走り寄って見たが、もうモモンガの姿はなかった。それにしても見事な滑空であった。
小笠原暠(文・写真)/米田一彦(写真)(1985)『秋田のけものたち』秋田魁新報社、35頁。歯切れよい文章。
小熊『単一民族神話の起源』
いっさいの差異を消滅させれば、差別もなくなる。この提言は、彼にしてみれば……
小熊英二(1995)『単一民族神話の起源――<日本人>の自画像の系譜』新曜社、171頁。囚われないでって。
カーソン『沈黙の春』
……発癌物質の波は、つぎからつぎへと……
カーソン、R(1992)『沈黙の春(改版)』新潮文庫(青樹簗一訳)、280頁。観点。
カートミル『人はなぜ殺すか』
……ほとんどの人は依然として、主義の一貫性よりもソーセージの味の方を高く評価している。
カートミル、M(1995)『人はなぜ殺すか――狩猟仮設と動物観の文明史』新曜社(内田亮子訳)、345頁。印象深いラスト。
貝塚『論語』
弁舌さわやか、表情たっぷり、むやみに腰が低いのは、左丘明が恥ずべきことと考えた。……
貝塚茂樹訳注(1973)『論語』中公文庫、141頁。ウィット。
梶ほか『野生動物管理のための狩猟学』
……担い手育成の重要性はどの県も認識していたが、事業として専門的捕獲技術者を育成する動きはなかった。狩猟者の激減と効果的な被害対策が求められている現状から、捕獲の担い手を育成する事業の実施が望まれる。
梶光一・伊吾田宏正・鈴木正嗣編著(2013)『野生動物管理のための狩猟学』朝倉書店、115頁。八代田千鶴の文章にて。
梶ほか『野生動物管理システム』
……これらの知見の蓄積から、被害防除では、農家を中心とした地域・集落の住民が一体となって主体的に取り組み、行政や農業普及指導センター、試験研究機関などがそれを支援する形態がもっとも効果的とされている。……
梶光一・土屋俊幸編著(2014)『野生動物管理システム』東京大学出版会、88頁。大橋春香「市町村レベル」の章にて。
梶ほか『野生動物の管理システム』
……しかし日本の市町村は、地元猟友会に依存して慣習的な方法によって有害鳥獣捕獲を実施してきた経緯があり、市町村が主体的に鳥獣管理の計画を立てて目標を設定し、管理を実行するという構造にはなっていない。……
梶光一・小池伸介編著(2015)『野生動物の管理システム――クマ・シカ・イノシシとの共存をめざして』講談社、205頁。小池伸介の文章にて。
嘉田『生活世界の環境学』
……人びとが建前として口にすることと行動とのギャップをどのように埋めたら……
嘉田由紀子(1995)『生活世界の環境学――琵琶湖からのメッセージ』農山漁村文化協会、77頁。地域住民へ。
加藤『現代倫理学入門』
……他人に危害や迷惑をかけないなら何をしてもいいというのが、自由主義の中心にある考え方である。ここには積極的に何をすべきかと言うことに、一言も触れまいとする覚悟がある。
加藤尚武(1997)『現代倫理学入門』講談社学術文庫、187頁。かっけぇ。
加藤編『環境と倫理』
……蚊を殺したり、木を切ったり、自分の庭の芝生を刈るといった、一見するとどうということもない問題(非人間中心主義に対しては、必ずこういう場合はどうなんだという冷笑的な意見が出てくる)に頭を悩ます必要がなくなるのである。……
加藤尚武編(1998)『環境と倫理――自然と人間の共生を求めて』有斐閣アルマ、139頁。谷本光男の文章にて。比べちゃうね。
金森ほか『日本経済読本』
……小泉政権は、りそな銀行への公的資金の注入に加え、二○○二年に「金融再生プログラム」を策定し、目標通り三年間で主要行の不良債権比率を半減させ、○五年には金融システムは正常化に向かう。……
金森久雄・大守隆編著(2013)『日本経済読本(第19版)』東洋経済新報社、61頁。神田玲子の文章にて。6章がすきです。
金子『市場』
……だが、このような「強い個人の仮定」は絶えず現実に裏切られてゆく。……
金子勝(1999)『市場』岩波書店、7頁。思考のフロンティア。
神山「鳥獣保護法改正の論点整理」
神山智美(2014)「鳥獣保護法改正の論点整理――法律名に「管理」が加わることに関する法学的な一考察」『富山大学紀要.富大経済論集』60巻2号、277-320頁。法学へ偏りか。
ガルブレイス『ゆたかな社会』
……ゆたかな社会は同情的である必要はないが、冷酷さを正当化すべき高尚な哲学的理由もなくなっている……
ガルブレイス、J・K(1990)『ゆたかな社会(第4版)』岩波書店(鈴木哲太郎訳)、386頁。新しい階級、ね。
川上『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』
……彼は植物学者だが、ヤシガニを見つけてテンションが上がり、実は動物学者になりたかったと無用なカミングアウトを始める。
川上和人(2020)『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』新潮文庫、74頁。饒舌で誠。
カント『道徳形而上学原論』
……実に行為の道徳的価値は、意志の〔規定〕原理のなか以外にはどこにも見出され得ない、さればこそこの価値は、行為によって実現され得るところの目的にはいささかもかかわりがないのである。……
カント(1976)『道徳形而上学原論(改版)』岩波文庫(篠田英雄訳)、37頁。しっくりこないのね。
岸ほか『質的社会調査の方法』
こうした他者理解をめぐる議論に対する私なりの答えは、「他者」ではなく「他者の対峙する世界」を捉えるというものです。……
岸政彦・石岡丈昇・丸山里美(2016)『質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学』有斐閣、131頁。読みやすく。
北村『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』
女が主体性やポジティブな性欲を持って自分の肉体で自己表現するのと、主体性を剝ぎ取られて鑑賞の対象にされることの間には同じエロでも大きな差があります。……
北村紗衣(2019)『お砂糖とスパイスと爆発的な何か――不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』書肆侃侃房、143頁。とっつきやすく。
鬼頭『自然保護を問いなおす』
……近代が、自然破壊と同時に自然保護という概念も生み出したと言ったのは、まさに、両極の二種類の「切り身」の関係が……
鬼頭秀一(1996)『自然保護を問いなおす――環境倫理とネットワーク』ちくま新書、131頁。とかれる事態。
九鬼『「いき」の構造』
……魂を打込んだ真心が幾度か無惨に裏切られ、悩みに悩みを嘗めて鍛えられた心がいつわりやすい目的に目をくれなくなるのである。……
九鬼周造(1979)『「いき」の構造 他二篇』岩波文庫、25頁。解説にうなずき。
九鬼ほか『獣害対策の設計・計画手法』
以上のことから集団で獣害対策を実施する場合は、まず能動派の農家がまとまって対策を開始し、その後受動派の農家を巻き込んでいくような進め方が穏当で、その際には上にあげた農家特性が集団化の可否を判断する手がかりになる。……
九鬼康彰・武山絵美(2014)『獣害対策の設計・計画手法――人と野生動物の共生を目指して』農林統計出版、34頁。専門マウント。
九鬼ほか「獣害及びその対策に関する研究動向と展望」
九鬼康彰・武山絵美・岸岡智也(2014)「獣害及びその対策に関する研究動向と展望」『農村計画学会誌』33巻3号、362-368頁。有用か。
クラカワー『荒野へ』
……だが、彼の本質はつかみどころがなくて、曖昧で、やはりわかりにくかった。皆しだいに言葉すくなになり、会話は弾まなくなっていく。……
クラカワー、J(2007)『荒野へ』集英社文庫(佐宗鈴夫訳)、296頁。書き手に惹かれ。
クローバー『イシ』
……ウォーバートンはかつてこんなに教え易い、従順で好奇心にあふれた助手を持ったことはなかった。……
クローバー、T(1991)『イシ――北米最後の野生インディアン』岩波書店(行方昭夫訳)、227頁。快活な忍耐心(343頁)。
小泉『タイポグラフィの読み方』
これを音楽にたとえれば、ひとつの丸を画面に置くことは、太鼓をドンと叩いたことになり、そして線を引くことは、そのあとにシンバルを打ちこむことに似ています。……
小泉均(2000)『新デザインガイド タイポグラフィの読み方』美術出版社、22頁。語り口やわらかく。
小河原『読み書きの技法』
……前のパラグラフ、あるいは、後ろのパラグラフとあまりにも方向が逸れるようなパラグラフを書くことは、よほど筆力に自信でもないかぎり、避けるべきである。……
小河原誠(1996)『読み書きの技法』ちくま新書、71頁。段落!
コロミーナほか『我々は人間なのか?』
……これほどまでになめらかさを求める人間とは一体何なのだろうか?……
コロミーナ、B/ウィグリー、M(2017)『我々は人間なのか?――デザインと人間をめぐる考古学的覚書き』ビー・エヌ・エヌ新社(牧尾晴喜訳)、101頁。新鮮。
権丈『年金、民主主義、経済学』
税による貧困救済が、自助を基本とする市民社会にあってはどうしても扶助原理から抜け出せないできた状態のなかで、税財源の救貧政策とは根本的に異なる性質を持つ政策技術として社会保険が誕生することになります……。
権丈善一(2015)『年金、民主主義、経済学――再分配政策の政治経済学Ⅶ』、235頁。口語。
齋藤『公共性』
……「見棄てられた境遇」とは、他者から見棄てられることだけでなく、自分自身――「内的対話」のパートナー――からも見棄てられることでもあるとアーレントがいうのは、そのためである。
齋藤純一(2000)『公共性』岩波書店、26頁。思考のフロンティア。
佐々『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』
出版業界が8号を待っている
佐々涼子(2017)『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている――再生・日本製紙石巻工場』ハヤカワ・ノンフィクション文庫、158頁。つなぎあわさり。
サックス『レナードの朝』
……なにしろ私は、自分に与えられた人生の領分をつき破ってしまったのですから。……
サックス、O(1993)『レナードの朝』晶文社(石館康平・石館宇夫訳)、318頁。でも愛。
佐藤『フィールドワークの技法』
……そして、この本では、問題設定、データ収集、データ分析、民族誌の執筆という四つの作業を同時進行的に進めていき、問題と仮設を徐々に構造化していくだけでなく、民族誌自体も次第に完成させていくアプローチを指して漸次構造化法と呼ぶことにしたいと思います。
佐藤郁哉(2002)『フィールドワークの技法――問いを育てる、仮説をきたえる』新曜社、295頁。有用。
佐藤『フィールドワーク』
……もしかしたら、まったく見当違いの「別の何か」についての数値を、コンスタントにはじき出しているだけかもしれないのです。
佐藤郁哉(2006)『フィールドワーク――書を持って街へ出よう(増補版)』新曜社、135頁。ヒント。
佐藤『憲法』
……したがって、いたずらに厳格な党規律によって議員の議会における行動を拘束する政党は、憲法になじみにくい存在といえよう。……
佐藤幸治(1995)『憲法(第三版)』青林書院、141-142頁。緊張はらむ。
佐藤「環境問題と知のガバナンス」
佐藤仁(2009)「環境問題と知のガバナンス――経験の無力化と暗黙知の回復」『環境社会学研究』15巻、39-53頁。学究的か。
佐藤『歴史学』
……市民的公共性の夢に多くの知識人が酔っていた。
佐藤卓己(2009)『ヒューマニティーズ 歴史学』岩波書店、55頁。醍醐味。
沢木『危機の宰相』
だが、私は、実際に下村治に会うまで、「時の権力者に媚を売った御用エコノミスト」というような頭でっかちの通念を鵜呑みにしていたかもしれない。……
沢木耕太郎(2008)『危機の宰相』文春文庫、60頁。功。
澤田『論文の書き方』
……起承転結は、詩文の法則としては立派に役を果すでしょうが、これを論文に応用してもらっては困ります。
澤田昭夫(1977)『論文の書き方』講談社学術文庫、104頁。理系か。
サンデル『これからの「正義」の話をしよう』
……道徳的行為者として自由で独立した自己であり、従前の道徳的束縛から解き放たれ、みずからの目的をみずから選ぶことができるという前提……
サンデル、M・J(2010)『これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学』早川書房(鬼澤忍訳)、276頁。旅のよう。
司馬『空海の風景』
……最澄よ、あなたに優劣を区別できるだけの能力があるか、という野太い反問が、受けとりようによっては、行間の虚空からひびいてくるようである。
司馬遼太郎(1978)『空海の風景(上)』『(下)』中公文庫、『下』の288頁。小説だから。
司馬『この国のかたち』
木戸が蔵六を最初に見たのは、江戸の小塚原で、蔵六が刑死人の解剖をしていたときだそうで、その腑分けのたしかさと、慎重さ、しかも動作に確信の裏付けがあって、むろん多弁ではない人柄に奇妙さを感じたのだそうです。……
司馬遼太郎(1993,93,95,97,99,00)『この国のかたち 一』『二』『三』『四』『五』『六』文春文庫、『五』の255-256頁。尾道にて。
下村『経済大国日本の選択』
……今日までの急速な経済の成長をふり返ってみて、きわめて特徴的なことは、近代的な工業が非常な勢いで拡充発展してきたということである。……機械を使うということは、一つの単純化した表現ではあるが、要するに、われわれが自分の手だけでやるよりも、もっと能率のいい、あるいはもっと精度の高い仕事を、機械を使うことによって、あるいは機械を支配することによって、実現できるということであり、その速度がきわめて急速であったというのが、今日までの日本の工業発展の姿だと思う。
 したがって……
下村治(1971)『経済大国日本の選択』東洋経済新報社、388頁。The 経済成長。
シュヴェーグラー『西洋哲学史』
……かれらには、神を物質からきりはなすのは、世界に不当な独立性をあたえることになると思われた。……
シュヴェーグラー(1958)『西洋哲学史 上巻(改版)』『下巻』岩波文庫(谷川徹三・松村一人訳)、220頁。まなざしに惚れ。
シュムペーター『経済学史』
……彼は自分の具体的目標にとっては測り難い価値をもちながらも、彼の取り扱った問題群の一つを深く掘り下げようとする時には忽ち失われざるをえないような普遍性を持っていた。……
シュムペーター(1980)『経済学史――学説ならびに方法の諸段階』岩波文庫(中山伊知郎・東畑精一訳)、114頁。広くて洗練。
ショウペンハウエル『読書について』
……しかし足どりも軽い完全な歩行には杖は無用であり、完璧な思索はペンをかりずにはかどる。……
ショウペンハウエル(1983)『読書について 他2篇(改版)』岩波文庫(斎藤忍随訳)、39頁。思想もて覚悟して。
ショーロホフ『静かなドン』
かもは頸をのばし、このつれない大地をやっと臨終のきわに抱くことができたというように、翼をひろげて横たわっていた。……
ショーロホフ(1972)『静かなドン1 世界文学全集24巻(13版)』『2 25巻(12版)』河出書房新社(横田瑞穂訳)、『2』の254-255頁。「存在の理法」(桑原武夫 解説)。
シラー『美と藝術の理論』
――しかし或る性格・或る行爲は、もし、それらを有つてゐる人間の感性を法則の抑壓の下において示すならば、若しくは、觀る人の感性に抑壓を興へるならば、それらは美はしくはない。……
シラー(1936)『美と藝術の理論――カリアス書簡』岩波文庫(草薙正夫訳)、76頁。休学の甲斐。
シンガー『実践の倫理』
……しかしながら、我々の注意を自己意識のある存在に向ける場合には、幸福の量という非人格的なもの以上のものが懸かっているのである。……
シンガー、P(1991)『実践の倫理』昭和堂(山内友三郎・塚崎智 監訳)、137頁。題に恥じなーい。
新藤『行政ってなんだろう』
この「法律による行政」にたいする無理解あるいは誤解が、行政権限の制限のない増殖と官庁の社会の変化への「柔軟」な対応を可能としたのです。とはいえ……
新藤宗幸(1998)『行政ってなんだろう』岩波ジュニア新書、88頁。行政学入口に?
神野ほか『「福祉政府」への提言』
……この児童手当の趣旨は、親にたいする出産奨励でも育児支援でもない。ひとつには、国家が児童労働を禁止し義務教育制度をとって児童の稼働機会を閉ざしていることについて、児童にたいして補償するものである。……
神野直彦・金子勝編著(1999)『「福祉政府」への提言――社会保障の新体系を構想する』岩波書店、215頁。大沢真理の文章にて。「制度的表現として」(同頁)。
神野『財政のしくみがわかる本』
……私たちが財政で配るのか、市場で配るのかは、お金持ちであろうと貧乏な人であろうと必要に応じて配らなければいけない財やサービスだと社会が決意するのか、あるいは貧しい人々にはゼロでもいい財やサービスだと決意するのか、ということなのです。
神野直彦(2007)『財政のしくみがわかる本』岩波ジュニア新書、19頁。前はわからんかったけど。
神野『財政学』
……市場社会とは人間を所有の対象とせずに、人間を所有の主体とすることによって、人間を解放した社会である。……
神野直彦(2021)『財政学(第3版)』有斐閣、165頁。鼓舞され。
末弘『法学入門』
……これというのも判決の結論だけを形式的にみてそれを判例なりと思い込むために起こる誤謬にほかならない……。
末広厳太郎(1980)『法学入門(第2版)』日本評論社、140頁。問答式。
瀬戸内『ゆきてかえらぬ』
……自分を汚していけばいくほど、ひこ乃の清純さに対して、自分の恋は報われる資格を失い、成立し難くなるのだと思う嗜虐心で、われとわが身を傷つけ……
瀬戸内晴美(1978)『ゆきてかえらぬ』文春文庫、132頁。肖像画家の技術(秋山駿 解説より)。
ソンタグ『隠喩としての病い エイズとその隠喩』
……「他者」の病気を「自分たちのもの」と認めることによって、絶大な力をもつ少数者を懐柔しようとする欲望……
ソンタグ、S(1992)『隠喩としての病い エイズとその隠喩(新版)』みすず書房(富山太佳夫訳)、224-225頁。vs 病は気から。
田尾『行政サービスの組織と管理』
サービス組織に、利他的で非営利的な特徴を重ね合わせ、それをプロフェッショナルな権威によって強化すれば、自治体は、あらゆる対立しあい競合しあう利害関係を超越した立場をとることができる。……
田尾雅夫(1990)『行政サービスの組織と管理――地方自治体における理論と実際』木鐸社、131頁。「管理者」メイン。
髙橋「ストリートレベル官僚制論の見直し」
髙橋克紀(2014)「ストリートレベル官僚制論の見直し」『姫路法学』55巻、33-55頁。圧倒。
高端ほか『福祉財政』
……そのため、当面は、地方自治体における自主性や裁量の拡大より、むしろ諸給付・諸事業の着実な展開を重視して、個別の特定補助金により財源を担保するという考え方もあろう。しかし……
高端正幸・伊集守直編著(2018)『福祉財政 福祉+α⑪』ミネルヴァ書房、133頁。11章がすきです。
瀧本『おとな性教育』
生理周期が安定している人でも、風邪やストレスなどのちょっとした体調の変化で周期がずれるのはよくあること。
瀧本いち華(2023)『人に言えない男女の悩みをすべて解決する おとな性教育』KADOKAWA、177頁。9倍の世に。
田口『マタギ』
……昨日までの狩りの日々の登り詰めていくような緊張感……
田口洋美(1994)『マタギ――森と狩人の記録』慶友社、315頁。歩く!
田口『越後三面山人記』
でもなー、いつかは、遅かれ早かれ、ここは無くなる部落だ。そう思わねぇかね。
田口洋美(2001)『越後三面山人記――マタギの自然観に習う』農山漁村文化協会、288頁。泣けます。
田口『クマ問題を考える』
……いなくするための駆除ではなく、適度な規模でいつづけて貰うための駆除なのであるから資源性の保持ということであり、極めて狩猟の論理に近い考え方になる。……
田口洋美(2017)『クマ問題を考える――野生動物生息拡大期のリテラシー』ヤマケイ新書、177頁。試み。
武田『「繊細さん」の本』
そこで私がおすすめしているのは、重要なものをひとつだけ選ぶこと。すべてに順番をつけなくていいから、絶対に今日やらなければならない大切な仕事を、ひとつだけ選びます。……
武田友紀(2018)『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本』飛鳥新社、165頁。すらすら読めます。
竹村『フェミニズム』
……社会的なお膳立てが整っている男と比べて、女は人生のさまざまな局面で抵抗と摩擦を、自己の外面に対してのみならず、自己の内面においても経験しなければならない。
竹村和子(2000)『フェミニズム』岩波書店、70頁。思考のフロンティア。
竹村「清家雪子『月に吠えらんねえ』を読むこと」
竹村葉月(2022)「清家雪子『月に吠えらんねえ』を読むこと――連載終了後の視点から」富山大学人文学部日本文学ゼミ編『富大比較文学(第二期 第五集)』52-74頁。ともに。
谷編『ライフ・ヒストリーを学ぶ人のために』
……ときには身を隠すようにして生きてこざるをえなかった彼女たちが、その眼差しを跳ね返す原動力として、心に、ノスタルジアとしての日本を想い、日本人としての自意識を強くもったことは……
谷富夫編著(1996)『ライフ・ヒストリーを学ぶ人のために』世界思想社、84頁。山本かほりの文章にて。お得感。
千葉『勉強の哲学』
……ですから、比較をしぶとく続け、考えを仮固定で保つ、という勉強の条件から言って、現場的な知識には注意する必要があります。……
千葉雅也(2017)『勉強の哲学――来たるべきバカのために』文藝春秋、190頁。ノれました。
チョ『82年生まれ、キム・ジヨン』
……携帯では主に業務関連のメールやメッセージをやりとりし、ついでにネットニュースを見たりしていたが、誓ってゲームやチャットをしていたわけではない。……
チョ・ナムジュ(2018)『82年生まれ、キム・ジヨン』筑摩書房(斎藤真理子訳)、163-164頁。「リーダブルな文体」(186頁)。
塚本『生類をめぐる政治』
農作業だけにとどまらない。総じてひとの生涯が、野鳥獣のそれと交錯しあうような感覚もあった。……
塚本学(1983)『生類をめぐる政治――元禄のフォークロア』平凡社、258頁。すてき。
デカルト『方法序説・情念論』
……彼が妻を正しいしかたで愛しておらぬ、というのは、もし彼が妻に対して真の愛をもっているのならば、妻に不信をいだくという気持など起こらぬはずであり、彼の愛しているのはもともと彼女自身ではなくて、彼女を独占することのうちにありとみずから想像するところの善であるからである。……
デカルト(1974)『方法序説・情念論』中公文庫(野田又夫訳)、226頁。疑うことは、極たらん?
ドーキンス『利己的な遺伝子』
……配偶者を棄てて別の雌を探してもっと遺伝子を増やしたいという誘惑にかられても、そうするにはもう一頭竜を打ちとってこなければならないのだと考えたら、雄は、きっと思いとどまるに違いない。……
ドーキンス、R(1991)『利己的な遺伝子』紀伊國屋書店(日高敏隆・岸由二・羽田節子・垂水雄二訳)、245頁。gene目線。
常田「カモシカ保護管理の四半世紀」
常田邦彦(2007)「カモシカ保護管理の四半世紀――文化財行政と鳥獣行政」『哺乳類化学』47巻1号、139-142頁。まとまってます。
読書猿『独学大全』
実を言えば、志の強さは、それを立てた瞬間にではなく、自身の行為や思考を絶えず志に結び直した、その繰り返しの中に生じる。
読書猿(2020)『独学大全――絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』ダイヤモンド社、67頁。映え。
飛田『財政の自治』
三位一体改革は切り口によって評価はそれぞれ異なるが、総じて見るとやはり、国主導の財政再建路線の潮流のなかに地方財政改革が巻き込まれていったということができる。
飛田博史(2013)『財政の自治』公人社、121頁。クリアな説明。
豊田『著作権と編集者・出版者』
©表示を適切に行えば「権利」の登録を要する国(方式主義国)で、登録などせずに自動的に、ベルヌ条約国・日本(無方式主義国)なみに、著作権が認められる。
豊田きいち(2004)『著作権と編集者・出版者』日本エディタースクール出版部、171頁。きっぱり。
豊田『編集者の著作権基礎知識』
……「引用」らしく見えて「使用」が多い。……
豊田きいち(2012)『編集者の著作権基礎知識』太田出版、176頁。わかりやすく。
鳥越編『環境問題の社会理論』
……「人の心」の理解に関して、「不能」であるという過激な出発点をニーダムは、私たちに示してくれた。……
鳥越皓之編著(1989)『環境問題の社会理論――生活環境主義の立場から』御茶の水書房、102頁。松田素ニの文章にて。ピンピンキリ。
中野『口述の生活史』
あぁ、神さまにも習えたいもんじゃなァ、と、私ァほんまに、頭のしんまで、こたえたん。
中野卓(1977)『口述の生活史――或る女の愛と呪いの日本近代』御茶の水書房、33頁。魅力的。
中村『日本動物民族誌』
……かつて日本で、ネズミがムシの一種とされた時代がおそらくあった。……
中村禎里(1987)『日本動物民族誌』海鳴社、58頁。ヒットはしなかった。
西尾『行政学』
現代の行政官・行政職員が直面している行政責任とは、この種のディレンマ状況を解きほぐし克服する責任であるように思われるのである。……
西尾勝(2001)『行政学(新版)』有斐閣、403頁。公務員雑誌にてすすめ。
新渡戸『武士道』
我はわが霊魂の座すところ開き、貴殿にそれを見せよう。穢れありとするか、清しとするか、貴殿みずからこれを見よ
新渡戸稲造(1993)『武士道』三笠書房・知的生きかた文庫(奈良本辰也訳)、119頁。「絶えざる克己」へ(114頁)。
日本自然保護協会編『生態学からみた野生生物の保護と法律』
……しかし、人間の福利が確保できることに加えて、それ以上の利益(意義)を認めることは差し支えないし、積極的な意義をもつのではないかと考える。
日本自然保護協会編(2010)『生態学からみた野生生物の保護と法律――生物多様性保全のために(改訂版)』講談社、67頁。坂本雅行の文章にて。
日本ジビエ振興協会『ジビエ 解体・調理の教科書』
食道同様、後の内臓摘出の際に、消化管の内容物が飛び出して枝肉を汚染しないよう、肛門(直腸)も結さつする。……
一般社団法人日本ジビエ振興協会監修(2018)『ジビエ 解体・調理の教科書』グラフィック社、59頁。装幀にグッ。
羽澄『自然保護の形』
……しかし、一九九二年に生物多様性条約に加盟してからは、生物多様性の保全の責務が国に発生しましたから、そのマネジメントの責任主体は国にあると考えてよいでしょう。……
羽澄俊裕(2017)『自然保護の形――鳥獣行政をアートする』文永堂出版、157頁。着想と感想の披露。
バタイユ『呪われた部分』
有用なという言葉の根本的な価値が議論のゆくえを決定しているときにはいつでも……その議論は必然的に間違っており、根本の問題が回避されていると言い切ってよい。……
バタイユ、G(2018)『呪われた部分――全般経済学試論・蕩尽』ちくま学芸文庫(酒井健訳)、305頁。先生から。
畠山『官僚制支配の日常構造』
……即ち、一方で仕事の裁量を通しての権力があり、他方で仕事に不可欠の資源配分の決定における無能力がある。第一線職員の権力という視覚をとる場合、このような二義性あるいは二つの顔が政策形成とどのように絡みあっているか、が解くべき課題となる。……
畠山弘文(1989)『官僚制支配の日常構造――善意による支配とは何か』三一書房、59頁。かっこよく。
パヴロフ『茶色の朝』
きっと彼は正しいのだろう。
あまり感傷的になっても仕方がないし……
パヴロフ、F(物語)/ギャロ、V(絵)/高橋哲哉(メッセージ)(2003)『茶色の朝』大月書店(藤本一勇訳)、5頁。CATCHY.
羽山『野生動物問題』
……私が言いたいのは、従来の問題ではその解決の責任を地域住民にだけ押し付けてきたことが間違っていて、その一方で問題解決には社会の変革とともに地域住民の主体的なかかわりが欠かせないということだ。
羽山伸一(2001)『野生動物問題』地人書館、243頁。はじまりのよう。
羽山ほか『野生動物管理』
農作物は、野生の食物に比べて消化率や栄養価が高く、可食部が多く採食効率も高いため、農作物被害を起こしている群れ(猿害群)では、餌付けされている群れと同様に栄養状態が良くなり、繁殖パラメータの変化が起こることが予想される。……
羽山伸一・三浦慎吾・梶光一・鈴木正嗣編著(2016)『野生動物管理――理論と技術(増補版)』文永堂出版、415頁。室山泰之の文章にて。7・20・32章、気に入り。
バルト『言語のざわめき』
……フローベールの晴雨計、ミシュレの小さなドアは、最終的に、つぎのこと以外は何も告げていないのだ。すなわち、これが現実である、と。だが、そのとき意味されているのは、《現実》という範疇……。
バルト、R(1987)『言語のざわめき』みすず書房(花輪光訳)、195頁。つねづね思ったり?
平川『科学は誰のものか』
ここで重要なのは、このような違いは、科学的に見てどちらが正しいかという問題ではなく、「利用率」を定義するに当たって、何を本質的に大事なものと見なし、何を切り捨てるかという一種の「価値判断」の違いによるものだということである。
平川秀幸(2010)『科学は誰のものか――社会の側から問い直す』NHK出版、164頁。市民社会論。
府川『組版原論』
……またテクスチュアが均質でないところにこそ日本語の、漢字仮名交じり文を組み合わせるデザインの妙味がある。……
府川充男(1996)『組版原論――タイポグラフィイと活字・写植・DTP』太田出版、52頁。デカいけど読みやすく。
福岡『生物と無生物のあいだ』
……生命の律動? そう私は先に書いた。このような言葉が喚起するイメージを、ミクロな解像力を保ったままできるだけ正確に定義づける方法はありえるのか。……
福岡伸一(2007)『生物と無生物のあいだ』講談社現代新書、38頁。ドラマチックな。
福岡『自然農法』
……私がこの三十数年かかってわずかに知りえたことは、自然農法で、自然に土を若返らすことができたということと、ミカンの自然形はこのようなものであったというくらいのものである。
福岡正信(1985)『無Ⅲ 自然農法』春秋社、322頁。「自然は完全である」(177頁)、か。
福沢『学問のすゝめ』
……異説争論の際に事物の真理を求むるは、なお逆風に向かって舟を行るが如し。……
福沢諭吉(1978)『学問のすゝめ(改版)』岩波文庫、135頁。いまでも。
藤田『行政法』
……しかし私には、これを認める理論的根拠を見出すことができない
藤田宙靖(2005)『第四版行政法Ⅰ(総論)(改訂版)』青林書院、499頁。10日費やす。
藤森ほか『森林における野生生物の保護管理』
……オオカミが存在しない環境でシカが生活域の食糧(一次生産量)に見合った頭数を維持できるように進化するには、数万年以上の年数を必要とするであろう。……
藤森隆郎・由井正敏・石井信夫編著(1999)『森林における野生生物の保護管理――生物多様性の保全に向けて』日本林業調査会、160頁。垰田宏の文章にて。ときおり滲む。
フランクル『夜と霧』
……この究極の意味をここ、この居住棟で、今、実際には見込みなどまるでない状況で、わたしたちが生きることにあたえるためにこそ、わたしはこうして言葉をしぼりだしているのだ、とわたしは語り納めた。
フランクル、V・E(2002)『夜と霧(新版)』みすず書房(池田香代子訳)、140頁。地でゆくような。
ブルデュー『構造と実践』
……多少なりとも漠然として、不明瞭で、言葉で表現されない、さらには言葉で表現しえない経験を、目に見えるようにし、信じさせ、客観化された明示的状態で明るみに出し、それによってそれらの経験を存在させるという、純粋に象徴的な権力……
ブルデュー、P(1988)『構造と実践――ブルデュー自身によるブルデュー』新評論(石崎晴己訳)、230頁。踏まえたい。
フロイト『精神分析学入門』
……乳児は自分の排尿行為を特別な誇りをもってながめているように思われます。
フロイト(1973)『精神分析学入門』中公文庫(懸田克躬訳)、429頁。うん、入門。
フロム『自由からの逃走』
……かれは孤独にたえられないので、自我を失う道を選ぶ。……
フロム、E(1965)『自由からの逃走』東京創元社(日高六郎訳)、283頁。タフにならんとか。
ヘレロ『ベア・アタックス』
……ときには、クマによる捕食が、エレク(アカシカ)やムース(ヘラジカ)のようなほかの種の個体群動態に影響をあたえることもあるだろう。けれども、すべてのクマを殺したとしても、生態系が崩壊するわけではない。
ヘレロ、S(2000)『ベア・アタックス――クマはなぜ人を襲うかⅠ』『Ⅱ』北海道大学図書刊行会(嶋田みどり・大山卓悠訳)、435頁。姿勢がすきです。
ホックシールド『管理される心』
一部の理論家は、感情は学問的な分析に耐えられるような概念ではないとまで言っている。……
ホックシールド、A・R(2000)『管理される心――感情が商品になるとき』世界思想社(石川准・室伏亜希訳)、228頁。思い当たり。
ポルテッリ『オーラルヒストリーとは何か』
……ブラックコーヒーの方がいいと思う私の好みは、砂糖を振舞って見せる余裕を誇示する必要のない人間のぜいたくなのだと気づくまで、それほど時間はかからなかった。
ポルテッリ、A(2016)『オーラルヒストリーとは何か』水声社(朴沙羅訳)、150頁。口述資料とは。
ポルトマン『人間はどこまで動物か』
生物学の任務がこのようなものだとすると、問題の解決は、人間の動物性の証明だから、人間と動物のあいだの橋渡しすべき距離がみじかければみじかいほどやさしいことになる。……
ポルトマン、A(1961)『人間はどこまで動物か――新しい人間像のために』岩波新書(高木正孝訳)、183頁。人間の特殊性。
本多『日本語の作文技術』
……要するにこれは事の本質をオブラートで包むための技法であり、謙虚さを売りものにしている慇懃無礼な態度にすぎない。……
本多勝一(1982)『日本語の作文技術』朝日文庫、206頁。読点に御覚悟。
前田『市民を雇わない国家』
……しかし、ここで確認されたのは国民の価値観と各国の公務員数という二つの事実に過ぎない。国民の価値観が公務員数を規定するメカニズムは、この図からは読み取れないのである。……
前田健太郎(2014)『市民を雇わない国家――日本が公務員の少ない国へと至った道』東京大学出版会、60頁。堅実。
前田『介助現場の社会学』
……かれらは「現場」と「日常」を往還することを通して両岸の敷居を下げ、アチラとコチラをつないだ跡にやすりをかけ、グラデーションがかった境界をうやむやにする――少なくとも、そうしたことが求められている。……
前田拓也(2009)『介助現場の社会学――身体障害者の自立生活と介助者のリアリティ』生活書院、334頁。これよかった!
前田『いきもの図鑑えほん』
後ろ足の指は5本。かかとを地面につけて歩く。
前田まゆみ(2012)『いきもの図鑑えほん』あすなろ書房、31頁。すぐれ。
又吉『夜を乗り越える』
……井伏さんが放屁なされたと書いたことが、その時太宰が感じたおもしろさの本当の温度に近い感触を読者に伝える役割を果たしたんじゃないかと思うんです。
又吉直樹(2016)『夜を乗り越える』小学館よしもと新書、170頁。こっから、読みたく。
松原『カラスの教科書』
……私が見たハシブトガラスのストリートファイトは2羽が肩をそびやかして歩き、お互いに肩をぶつけあった挙句、相手の足を引っ掛けあうというものだった。……
松原始(2016)『カラスの教科書』講談社文庫、59頁。与件に、思う。
松村「里山ボランティアにかかわる生態学的ポリティクスへの抗い方」
間宮『市場社会の思想史』
紙上の水滴という比喩に対照させるなら、第二の見方に立つ人たちの市場のイメージは、紙の上の火種である。……
間宮陽介(1999)『市場社会の思想史――「自由」をどう解釈するか』中公新書、18頁。金子先生から。
丸山「野宿者の抵抗と主体性」
丸山里美(2006)「野宿者の抵抗と主体性――女性野宿者の日常的実践から」『社会学評論』56巻4号、898-914頁。読み物としても。
丸山『日本の思想』
……保守勢力も進歩主義者も、自由主義者も民主社会主義者も、コンミュニストもそれぞれの精神の奥底に少数者意識あるいは被害者意識をもっている。……
丸山真男(1961)『日本の思想』岩波文庫、143頁。問いかけて。
丸山「「自然保護」再考」
丸山康司(1997)「「自然保護」再考――青森県脇野沢村における「北限のサル」と「山猿」」『環境社会学研究』3巻、149-164頁。まなざしがよく。
丸山『サルと人間の環境問題』
……つまり、野生動物のかかわりが多様である地域社会においては、その多様性がある種の心理的な緩衝地帯になるため、場合によってはより適切な方策が得られるまでの時間的猶予を生み出す可能性がある。
丸山康司(2006)『サルと人間の環境問題――ニホンザルをめぐる自然保護と獣害のはざまから』昭和堂、228頁。ピタピタ回収。
丸山「「野生生物」との共存を考える」
丸山康司(2008)「「野生生物」との共存を考える」『環境社会学研究』14巻、5-20頁。06と併せて。
三浦『環境と差別のクリティーク』
おそらく、いま、私たちに必要なのは、動物を屠るという厳粛な意味合いを、自分たちの生活実感のなかに取り戻すことだろう。……
三浦耕吉郎(2009)『環境と差別のクリティーク――屠場・「不法占拠」・部落差別』新曜社。78頁。もう一回読みたい。
三浦『ワイルドライフマネジメント入門』
……それぞれは、生態系主義、公的責任、科学(優位)主義とよべるだろう。わたしはこれらをワイルドライフ・マネジメントにおける三原則とよびたい。……
三浦慎吾(2008)『ワイルドライフマネジメント入門――野生動物とどう向き合うか』岩波書店、19頁。ふーん。
宮内編『なぜ環境保全はうまくいかないのか』
……彼(女)らのつぶやきやいらだちは、表面上は対峙する行政へと向けられているが、その先にはガバメント型公共性を正当化する市民社会がある。……
宮内泰介編著(2013)『なぜ環境保全はうまくいかないのか――現場から考える「順応的ガバナンス」の可能性』新泉社、244頁。松村正治の文章にて。掘り出しもの。
宮内編『どうすれば環境保全はうまくいくのか』
……ここでAMさんがあらためて徹底した寄りそいの姿勢をとったことは、被災地での経験が大きく反映していると言えるだろうが、もう少し一般化するなら、目標志向型のかかわりがひと段落したところで、寄りそい型の支援が求められる段階がありうることを示している。……
宮内泰介編著(2017)『どうすれば環境保全はうまくいくのか――現場から考える「順応的ガバナンス」の進め方』新泉社、214-215頁。三上直之の文章にて。良いのは良い。
宮本『忘れられた日本人』
……村の中で解決のつかない時には村の外へ出してやることが一番いい解決法であった。古くはそれが十分にできなかったのである。……
宮本常一(1984)『忘れられた日本人』岩波文庫、42頁。紙碑 と。
ミル『自由論』
……むしろ彼は、一般に流布している真理が一面的である限りは、一般に受け入れられない真理もまた一面的な主張者をもっている方が望ましい、と考えるであろう。……
ミル、J・S(1971)『自由論』岩波文庫(塩尻公明・木村健康訳)、95頁。Discuss.
村上『アンダーグラウンド』
きっと彼女の頭の中で、何かが外に出たがっているのだ。そう感じた。大事な何かだ。……
村上春樹(1999)『アンダーグラウンド』講談社文庫、229頁。「この本は自分のためではなく、別のなにかのために、少しでも価値のあるものとして」(761頁)。
室山『サルはなぜ山を下りる?』
……残念ながら「被害管理」については、「被害防除」という用語を使い続けている研究者も多く、環境省や農林水産省も使い続けている。
室山泰之(2017)『サルはなぜ山を下りる?――野生動物との共生』京都大学学術出版会、106頁。京大出版ですか。
メンデルサンド『本を読むときに何が起きているのか』
……彼の増幅する幸福感が、意味的にではなく、音響的に伝わってくる……
メンデルサンド、P(2015)『本を読むときに何が起きているのか――ことばとビジュアルの間、目と頭の間』フィルムアート社(細谷由依子訳)、308頁。オリジナル。
本川『ゾウの時間 ネズミの時間』
……一ミリ程度の大きさは、粘性力と慣性力とを使い分けるには、うってつけのサイズである。スパスモネームの収縮により、ふだんの粘性力の世界から慣性力の世界へと一気に移って捕食を免れているのであろう。……
本川達雄(1992)『ゾウの時間 ネズミの時間――サイズの生物学』中公新書、97頁。イメージ、続々。
森『「A」』
……そもそも中間に立とうにも、オウムの座標がわからない限りは、両端から等距離の位置など測定できるはずがない。……
森達也(2002)『「A」――マスコミが報道しなかったオウムの素顔』角川文庫、131頁。まっすぐか。
森『それでもドキュメンタリーは嘘をつく』
今僕たちが意識化せねばならないことは、無理やりに当事者側に身を置こうとすることではなく(略)、自分が非当事者であることを、もっと徹底して自覚することだ。……
森達也(2008)『それでもドキュメンタリーは嘘をつく』角川文庫、291頁。ジャーナリズムじゃないんだよ と。
森嶋『思想としての近代経済学』
……価値の選択は自由だと考えるウェーバーは、学問を客観的な適合関係の分析や客観的な効果分析に限定し、学問的推論の部分には価値判断の立入りを厳禁するという方法論を立てることにより、価値判断と学問を調和させたのである。
森嶋通夫(1994)『思想としての近代経済学』岩波新書、134頁。濃い。
山端ほか「集落アンケートを用いた鳥獣被害金額算出方法の検討」
山端直人・飯場聡子・鬼頭敦史(2017)「集落アンケートを用いた鳥獣被害金額算出方法の検討――三重県における鳥獣被害金額算定の試行」『農村計画学会誌』36巻論文特集号、363-368頁。
山本ほか「狩猟者の狩猟行動と自然環境の変遷」
山本信次・望月萌(2019)「狩猟者の狩猟行動と自然環境の変遷――盛岡市を事例として」『岩手大学農学部演習林報告』50巻論文特集号、89-96頁。卒論で。
閻「野生動物に積極的に関わらない選択をする限界集落の“合理性”」
リプスキー『行政サービスのディレンマ』
……官僚制的目的にかなう差別待遇は、サービスに関して合理化された定型的な手続きやえこひいきのなかに無関心を読み取ろうとしがちな対象者には容認できるものではない……。
リプスキー、M(1986)『行政サービスのディレンマ――ストリート・レベルの官僚制』木鐸社(田尾雅夫・北大路信郷訳)、167頁。8章、比較的読みやすいかと。
レイノルズ『プレゼンテーションZen』
……いいプレゼンテーションは、対称・非対称の両方のデザインが混ざったスライドをビジュアルに取り入れている。
レイノルズ、G(2009)『プレゼンテーションZen』ピアソン・エデュケーション(熊谷小百合訳)、162頁。サクッと。
鷲谷ほか『実践 野生動物管理学』
また、野生動物管理においては、主観的な判断ではなく、客観的なデータ、つまり科学的情報に基づいて、個体数管理、被害管理、生息地管理を実施することが肝要である。……
鷲谷いづみ・梶光一・横山真弓・鈴木正嗣編著(2021)『実践 野生動物管理学』培風館、69頁。横山の文章にて。